Web 概要版(2026年10月)

EV充電インフラ

自治体ガイドライン

「読む」から「使う」へ

— 現場担当者が即日動ける実務ツール

はじめに・要旨

充電インフラは「クルマの設備」から「地域インフラ」へ

全国の充電器数は2024年度末で約6.8万口に達し、この1年で約2.8万口増えるなど、整備は明らかに拡大期に入りました。一方で政府が掲げる「2030年までに30万口」への達成率はまだ約23%です。残りの約8割を限られた年数で積み上げるには、民間任せでは届かず、自治体の積極的な関与が欠かせません。

背景には自治体にとってより切実な事情もあります。ガソリンスタンドはピーク時の約6万カ所から半減し、30年連続で減少しています。過疎地を中心に「給油難民」が拡大するなか、EV充電インフラは給油所に代わって住民の「移動の権利」を支える地域インフラへと役割を広げつつあります。

発行にあたって

充電インフラの整備は環境部局だけで完結する仕事ではありません。企画・管財・土木・防災・広報が関わり、初期投資から運用・更新までを単年度予算の発想を超えて設計する必要があります。本書が「住民対話」や「庁内ガバナンス」に章を割いているのは、技術や予算だけでは整備が前に進まないことを、自治体支援の現場で繰り返し見てきたためです。

環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也

現在地の把握

日本のEV充電インフラの現状

普通充電が約5.6万口、急速充電が約1.2万口。急速充電器では90kW以上の高出力機が全体の約3割を占めるまでになり、インフラは拡大期に入りました。

6.8
全国の充電器
23
目標達成率
2.7
ガソリンスタンド
510
充電補助金予算
出典:経済産業省・NEV等の公開データ(2024年度末時点)およびR7年度補正予算に基づきISEP整理。
EV充電インフラ普及の成否を決める3つのレバー

「配置計画・品質仕様・住民対話」で決まる

① 配置計画

どこに・何口・何kWか

生活動線と滞在時間で類型を使い分け、需要推計 → 候補地選定 → 系統確認の順で進めます。

② 品質仕様

迷わず・安心して・また使いたい

「充電できた」で終わらせません。OCPP準拠・SLA設定・UI/UX基準がカギになります。

③ 住民対話

不安に先回りで応える

「高い」「危険」「冬は使えない」等の不安に、FAQ・ポータル・誤情報対応体制をセットで用意します。

0. クイックスタート

90日で小規模実証をはじめる

あなたは、EV充電普及担当者として、公共EV充電設備の導入を検討することになりました。着任から90日で小規模実証を開始するためのロードマップを見ていきましょう。

WEEK 1〜2

体制構築

責任者を指名し、部局横断の会議体を設置します。

WEEK 3〜6

候補地棚卸し

公有地リストを作成し、系統連系の事前相談に着手します。

WEEK 7〜10

事業者対話

RFIを発出し、仕様・運用条件を詰めてスキームを比較します。

WEEK 11〜13

小規模実証開始

1〜2ヶ所で試行運用し、KPI計測を開始します。

つまずきやすい典型パターン

多くの自治体でつまずきやすいパターンは、下記の3点です。原因を踏まえた上で、対策をとりましょう。系統連系の事前相談だけは、もっとも時間がかかるため必ずWeek 3〜6 で着手しましょう。

1. 利用率の低い充電器

視認性が低く認証も複雑で料金も不透明だと、「使えない」という評判が定着してしまいます。

↓

対策:UI/UX基準と課金設計を仕様書に反映しましょう。

2. 復旧過程が不明確

保守SLAが未明記だと責任分界が曖昧になり、更新費も賄えず撤去されてしまいます。

↓

対策:SLA要件と保守管理で契約段階から担保しましょう。

3. 系統協議での遅延

高圧受電協議を後回しにすると全工程が1〜2年遅延します。

↓

対策:リードタイム一覧を参照し、Week 3〜6で着手しましょう。

確認すべき目標値(KPI)

まずは、以下の5つの指標を押さえておけば、体験・運用・財務・政策の各面から整備の進捗を評価できます。

分野 指標 目標値 計測頻度
体験 初回充電成功率(認証〜課金完了) 90%以上 月次
運用 充電器稼働率 95%以上 週次
運用 平均復旧時間(MTTR) 24時間以内 発生都度
財務 運営収支(基本料金最適化含む) 単年度黒字化時期を明示 四半期
政策 CO₂削減量・移動確保・防災活用実績 前年度比改善 年次

自治体EV充電インフラ計画ツール(付録)

EV充電インフラの整備に向けて、下記のツールを活用することができます。

  1. ボタンを押してファイルをダウンロード
  2. ZIPファイルを解凍し、中のHTMLファイル を開く
  3. アプリが起動するので、項目に入力していく
※ 入力した内容は PDF で出力できます。
※データが外部に送信されることはありません。パソコン内だけで完結するため安心してお使いいただけます。
付録 A

RFP作成ツール

自治体名・件名などの項目を入力すると、EV充電インフラの調達における提案書依頼(RFP)のドラフトを作成することができます。

ダウンロード
付録 B

インフラ整備チェックリスト

5つのカテゴリで構成されるチェックリストを使ってEV充電インフラ整備の進捗を確認できます。

ダウンロード
付録 C

KPIダッシュボード

EV充電インフラ整備を進めていく上で注視すべき項目にデータを入力することで、現状を確認することができます。

ダウンロード
1. 計画する

どこに・何口・いつまでに

1-1. 充電の3類型と配置の原則

基礎・目的地・経路の3類型を生活動線と滞在時間で使い分けることが、配置計画の出発点になります。

基礎充電

3〜6kW / 滞在8〜12h

自宅・職場・集合住宅が対象です。自治体は集合住宅への設置支援と条例整備を担います。

目的地充電

6〜50kW / 30分〜数時間

商業施設・観光地・道の駅が対象です。公有地への設置と民間誘導を担います。

経路充電

90〜350kW / 15〜30分

幹線道路沿い・SA/PAが対象です。立地確保と事業者連携を担います。

配置の基本原則:「生活動線 × 滞在時間」で類型を決め、「人口密度 × EV登録台数 × 観光入込数」で口数を推計します。

1-2. 需要推計の進め方

必要な口数を推計します。総量推計、地区別配分、施設別決定の順番で進めましょう。

Step 1. 総量推計

市町村全体の充電需要総量を推計しましょう(EV普及率シナリオ × 1台あたり充電回数) 。

Step 2. 地区別配分

人口分布・交通量・施設集積度で重み付けして地区別に配分しましょう。

Step 3. 施設別決定

施設ごとに口数・出力を決定しましょう(標準設計表を参照) 。

需要推計ツールの使い方

  1. ボタンを押してファイルをダウンロード
  2. ZIPファイルを解凍し、中のHTMLファイル を開く
  3. アプリが起動するので、項目に入力していく
※ 入力した内容は PDF で出力できます。
※データが外部に送信されることはありません。パソコン内だけで完結するため安心してお使いいただけます。
ツールをダウンロードして充電需要を推計する

1-3. 施設タイプ別の標準設計

代表的な施設タイプごとに、推奨出力・口数・駐車スペースの目安は以下の通りです。最低口数は将来の増設を前提とした出発点であり、利用が伸びれば推奨口数まで広げていきます。

施設タイプ 推奨出力 最低口数 推奨口数 備考
市区町村庁舎 6kW 2口 4〜6口 公用車と来庁者用を分離します
道の駅 50〜90kW 2口 4〜8口 観光ピークに対応し、30分回転を想定します
商業施設 6〜50kW 2口 駐車台数の2% 入口近くに配置します
医療・福祉 6kW 1口 2〜4口 バリアフリーが必須です
物流拠点 90〜150kW 2口 車両数の10% 夜間充電パターンを考慮します
公用車車庫 6-50kW EV台数分 全EV対応 ごみ収集車やコミュニティバス等と連動します

1-4 系統・受電のリードタイム一覧

工程ごとの所要期間と着手タイミングを把握しておくと、系統協議の遅れによる全体の遅延を防げます。

工程 所要期間 着手タイミング 備考
系統連系協議(低圧) 1〜3ヶ月 設置6ヶ月前 6kW以下は比較的短期です
系統連系協議(高圧) 6〜18ヶ月 設置18ヶ月前 50kW以上は必須です
高圧受電設備増強 12〜24ヶ月 設置24ヶ月前 キュービクル増設を含みます
配電線増強工事 12〜36ヶ月 できるだけ早期 電力会社負担の場合があります
重要:全工程のクリティカルパス

系統の協議と受電設備の準備は計画全体でもっとも時間がかかり、後回しにすると他のすべてを止めます。90日プランの Week 3〜6 で系統連系の事前相談を必ず開始してください。

1-5 ロードマップ

短期・中期・長期の3段階で整備の重点を切り替え、無理のない順序で拡大していきましょう。

短期 1〜2年

公用車のEV化と連動させて、既存施設(庁舎・道の駅)に普通充電を導入しましょう。小規模実証でKPIを回します。

中期 3〜5年

拠点施設での急速充電を整備を標準化し、民間連携によって面的に展開しましょう。SLA(Service Level Agreement)付きの運用体制を確立します。

長期 5年〜

大型車対応・超高出力化(150kW以上)に対応しましょう。また、V2H/DR対応設備へ段階的に切り替えましょう。SDVにも対応します。

2. 調達・整備する

何を仕様書に書くか

2-1 機器選定の基本要件(必須7項目)

EV充電設備の調達に際して、以下の7項目を仕様書に盛り込むことで、後から足すことができない重要な要件を調達段階で確保できます。

No 要件 具体的基準
1 通信規格準拠 【必須】OCPP 1.6以降(補助金要件)/【推奨】2.0.1対応準備
2 遠隔監視・復旧 稼働監視・遠隔再起動・異常時の自動通報に対応します
3 データAPI提供 利用回数・充電量・稼働率をAPIで取得します(KPIに必須)
4 SLA契約明記 復旧24h・稼働率95%以上を契約条項に定め、違反時はペナルティを課します
5 バリアフリー 区画幅3.5m以上を確保し、段差を解消して車椅子で単独操作できるようにします
6 将来拡張性 増設用の配管・盤スペースを確保し、ISO 15118対応を準備します
7 車両適合性検証 マッチングテストセンター等で試験済みの機器リストを求めます

2-2 UI/UX 設計基準 ─ 3原則

「迷わない・怖くない・また使いたい」の3原則で、充電体験の質を仕様に落とし込みましょう。

原則1:迷わない

  • 道路からの視認性を確保する(サイン・照明・路面表示)
  • 区画への誘導サインを設ける
  • 操作手順を表示する(日英 + ピクトグラム)

原則2:怖くない

  • 夜間照明を確保する(150ルクス以上)
  • 防犯カメラを設置する
  • 24時間対応コールセンターを明示する

原則3:また使いたい

  • 初回の成功を支援する(QRで操作動画)
  • 料金を事前に表示する
  • 待ち時間・完了予測を表示する

2-3 課金・認証・決済

EV充電は従量課金(kWh課金)が基本になりつつあります。特例計量器搭載の対応機を推奨し、決済手段は幅広く確保しましょう。

決済手段

クレジット(タッチ)・QR・交通系ICの3種を最低限確保しましょう。

料金体系

従量制を基本に、kWh課金対応機を推奨します。時間制の場合は上限金額を必ず設定しましょう。

2-4 電力・需要管理

急速充電器の導入は受電需要を押し上げるため、基本料金の急増を防ぐ需要管理を必須要件としましょう。

重要

庁舎に急速充電器を設置すると受電契約の需要が跳ね上がり、基本料金が大幅に増加する可能性があります。仕様書に「需要管理機能」を必須要件として明記しましょう。

具体的な対策例としては、デマンドコントローラーによる出力自動制御、充電スケジューリング、蓄電池併設によるピークカット、太陽光との組み合わせなどがあります。

2-5 事業スキーム(所有 × 運営 × 収益)

直営・PPP/PFI・民有地誘導の長短を見比べ、施設の性格と規模にあったスキームを選びましょう。

スキーム メリット デメリット 適合する場面
公有地・直営 方針の自由度が高い/データ活用しやすい 運用負荷・専門人材が必要 庁舎・公共施設
PPP/PFI 民間ノウハウ活用/リスク分散 契約設計が複雑/SLA管理 大規模拠点
民有地誘導 財政負担が小さい/面展開しやすい 品質管理が困難/撤退リスク 商業施設・コンビニ

2-6 RFP ひな形と評価基準

ひな形をもとに、直必須要件・評価基準・契約条項の3部構成で、仕様書に落とし込みましょう。

Part 1 必須要件一覧

2-1 機器 / 2-2 UI/UX / 2-3 課金 / 2-4 電力

Part 2. 評価基準

価格 50% + 運用品質 30% + 拡張性 20% を推奨(2-5)

Part 3. 契約条項ひな形

稼働率保証・復旧時間・データ提供・更新/撤去条件を規定

2-7 防災拠点の設計とV2L/V2H

平時の充電拠点を非常時の電源としても使えるよう、必要設備と優先給電先を調達時に設計しておきましょう。

必要設備

V2L対応充放電器、分電盤切替スイッチ、非常用コンセントを調達時に確保しましょう。

優先給電先の設計

通信設備 → 照明 → 空調 → 情報端末の順で給電しましょう。

3. 運用・改善する

設置して終わりにしない

3-1 現場運用ルール

区画管理から災害時の手順まで、現場で迷わないための運用ルールとして、下記の5点が重要です。

EV専用区画の管理:路面表示・看板・パイロンで明示しましょう。ガソリン車が駐車した場合の対応フローも用意しましょう。

ピーク時の運用:予約制を検討しましょう。完了通知と移動催促で回転率が高まります。

苦情の一次切り分け:故障・操作不明・料金不満・駐車トラブルの4類型で振り分けましょう。

冬季・悪天候対応:優先除雪体制を組み、凍結対策と積雪時のサイン視認性を確保しましょう。

災害時運用手順:通常充電からV2L給電へ切り替え、復旧後は自動で戻します。年次防災訓練にEV給電テストを組み込みます。

3-2 保守・SLA・品質管理

自治体・運営事業者・メーカー・施設管理者の役割と責任を契約段階で分けておくことが、迅速な復旧のカギになります。

自治体

政策・予算・広報

運営事業者

日常運用・一次対応

機器メーカー

修理・部品供給

施設管理者

駐車場管理・清掃

3-4 広報・住民対応

住民の不安には決まった「型」があります。否定せず、データと使い分けの説明で先回りして応えましょう。よくある5つの不安と、対応メッセージの方向性は下記の通りです。

不安の類型 対応メッセージの方向性
「EVは高い」 TCO(総保有コスト)比較で、燃料費とメンテ費を含めた実質コストを提示します
「電池が危険」 火災発生率のデータを比較し(ICE車 vs EV)、消防庁の安全ガイドラインを参照します
「冬は使えない」 寒冷地での実績(ノルウェー等)を示し、プレコンディショニング機能を説明します
「充電に時間がかかる」 基礎充電(自宅夜間)と経路充電(15〜30分)の使い分けを説明します
「電力が足りない」 EV1台の年間消費電力は一般家庭の約1/3程度であり、再エネと組み合わせて説明します

3-5 庁内ガバナンス

EV充電は環境部局だけの仕事ではありません。企画・管財・土木・防災・広報を巻き込み、単年度予算の発想から脱却して、設置から更新までを一体で設計することが続けるコツです。

部局横断推進会議体:環境・企画・管財・土木・防災・広報の各部局から参加し、四半期ごとに開催する。

予算設計:導入費(初期)+運用費(年間)+更新費(7〜10年後)を一体で計上する。

補助金・支援制度の活用:設置数のみを成果指標にするのは避け、稼働率や利用率に応じた成果連動型にする。

4. 展望

将来の備えを、いま仕様に織り込む

4-1 V2H/VGI/DRの現実ルート

いきなりEVの電力を束ねて電力市場への参加を目指すのではなく、難易度の低いところから段階的に進めるのが現実的です。次の3ステップで、できることから着実に積み上げていきましょう。

STEP 1

充電タイミングをずらす

もっとも簡単です。料金インセンティブで実現できます。まずここからはじめましょう。

STEP 2

建物・機器への給電

防災用途からはじめ、日常利用へ拡大しましょう。

STEP 3

系統への逆潮流・市場参加

技術・制度・契約の3条件がそろってから着手しましょう。

4-2 過疎地交通とEVの接続

過疎地では「充電インフラ」と「移動手段の確保」は切り離せない一体の課題となります。

  1. デマンド型交通(DRT)への導入:EV車両をDRTに使う場合の、運行充電計画の考え方をおさえましょう。
  2. 自動運転の進展:レベル4の限定地域での実証が進行中。運行設計領域(ODD)の理解が重要となります。
  3. 商用車のEV化:ごみ収集車・コミュニティバス・スクールバス等のEV化が進展することが見込まれており、自治体の率先行動として重要となります。

4-3 SDV時代の備え + 規格の国際動向

Software Defined Vehicle(SDV)時代に向けて、いまの調達仕様で確保しておくべき「将来要件」を整理しておきましょう。

いまの仕様書に入れるべき最低要件

  1. OCPP 1.6以降準拠(必須)
  2. OCPP 2.0.1対応準備(推奨)
  3. ISO 15118対応準備(Plug&Charge)
  4. データAPI提供

急速充電コネクター規格

  • CHAdeMO:日本で主流です。V2Xを商用ベースで実装済みです。
  • CHAdeMO3.0(ChaoJi):日中共同で開発する超高出力規格です。
  • NACS(SAE J3400):北米で標準化済みです。
  • CCS2:欧州の標準規格です。

自治体への推奨

現時点ではCHAdeMO対応を基本としつつ、将来のマルチ規格対応を視野に入れた調達を推奨します。10年単位の投資であるため、後から足せない要件はいまの仕様に織り込みましょう。

国際比較

EV充電インフラ整備の世界の現在地

日本のEV販売シェアは3〜4%程度で、主要国と比べても導入初期段階にあります。だからこそ自治体には、将来を見据えた計画的な整備が求められます。まず、EV利用者の「充電不安」を解消することが重要です。庁舎・道の駅・観光施設・公共駐車場など、目に見える場所への目的地充電の整備が効果的です。普及が進んだ国では、重点が集合住宅対策・高出力化・スマート充電へ移行しています。

段階 自治体が優先すべきこと 充電タイプの重点
初期 「充電不安」の解消。目立つ場所に先行設置してEV購入を促進 目的地充電(普通)を中心に、経路充電(急速)を拠点に
成長期 面的展開、民間事業者との連携強化、集合住宅対策 基礎充電(集合住宅・職場)の拡充が急務
成熟期 品質向上、高出力化・従量課金、事業自立化 高出力急速充電の拡充、スマート充電・DR導入
先進国 自宅充電普及で公共依存度低下、V2G/VGIの実装 超高出力・商用車対応、双方向充放電

公共充電インフラ整備状況

世界各国では、EVの普及拡大に合わせて、充電インフラの整備が進められています。しかし、充電環境は公共充電器の設置数だけで評価できるものではありません。各国の公共充電インフラを比較する際には、公共充電口数(整備規模)、急速充電比率(利便性)、EV/充電口比(充実度)の3つの視点から総合的に評価することが重要です。

世界の充電インフラは「量」から「質」へ

中国や欧州では、充電器の設置拡大に加え 、高出力化や運用品質の向上が進んでいます。また、ノルウェーでは自宅充電の普及により公共充電への依存度が低下し、V2Gやスマート充電といった次世代サービスへの移行がはじまっています。日本においても、今後は単なる設置口数の拡大だけでなく、利用者が必要な場所で安心して充電できる充電ネットワークの構築が重要となります。

国際比較から読み取れる5つのポイント

1. 日本は「初期段階」にあります。EV販売シェア3~4%は世界的に見ても低い水準です。だからこそ、今のうちに充電インフラを整備すれば、EV普及を加速できます。

2. 「EV/充電口比」だけでは判断できません。ノルウェーはEV普及率が90%でもEV/充電口比は30%と高いものの、自宅充電が充実しているため大きな問題にはなっていません。一方、日本は集合住宅率が高く、公共充電への依存度が高くなる可能性があります。

3. 「口数」だけでなく、「出力」も重要です。EUのAFIRでは、BEV1台あたり1.3kWの充電容量を確保することが義務付けられています。日本の経産省も「平均出力倍増」を目標に掲げています。自治体の仕様においても、高出力化を意識することが重要です。

4. 充電規格の国際再編に注意が必要です。日本では現在CHAdeMOが主流ですが、北米ではNACSの標準化、欧州ではCCS2が主流となっています。さらに、日中共同でチャオジ3.0の開発も進められています。将来のマルチ規格対応を視野に入れた調達が重要です。

5. 自治体が主役となる国ほど充電インフラ整備に成功しています。中国では地方政府に目標達成が求められ、EUでは自治体が用地提供や許認可調整などに貢献しています。日本の自治体にも、「待ち」ではなく「率先して行動する」姿勢で地域の充電環境を整備していくことが求められます。

GLOSSARY

用語集

用語 カテゴリー 意味
あ行
エネルギーマネジメント 電力・系統 太陽光・蓄電池・EV充電を統合制御し、購入電力やデマンドを抑える仕組み。再エネと組み合わせ地域のエネルギー自立に寄与。
オフピーク充電 電力・系統 電力需要の少ない時間帯に充電をずらすこと。料金インセンティブで誘導する単方向DRの基本形。
か行
基礎充電 機器 自宅・職場・集合住宅など長時間駐車場所での充電(3〜6kW、滞在8〜12時間)。自治体は集合住宅支援と条例整備が役割。
急速充電 機器 高出力(おおむね50kW以上)で短時間に充電する方式。高圧受電が必要で系統連系のリードタイムが長い。
経路充電 機器 幹線道路沿い・SA/PAでの短時間充電(90〜350kW、15〜30分)。長距離移動を支える。立地確保と事業者連携が役割。
系統連系 電力・系統 充電設備を電力系統に接続すること。協議や工事に時間を要し、全工程のクリティカルパスになることが多い。
さ行
従量課金(kWh課金) 事業・契約 充電した電力量に応じて課金する方式。特別計量器の搭載が必要。2026年4月から本格導入が進む。
スマート充電 電力・系統 需給状況に応じて充電出力やタイミングを自動制御する仕組み。OCPP 2.0.1が前提。
た行
チャオジ(CHAdeMO 3.0) 規格・通信 日中共同開発の次世代超高出力規格(900kW級)。将来のグローバル標準を目指す。
デマンド(最大需要電力) 電力・系統 一定期間の最大需要電力。急速充電で跳ね上がると基本料金が増える。管理が財務上の重要対策。
デマンドレスポンス(DR) 電力・系統 需給に応じて需要側が消費を調整する仕組み。充電タイミングの制御もその一つ。
デマンド型交通(DRT) 政策 予約に応じて運行する需要応答型の地域交通。EV車両利用時は運行充電計画の設計が必要。
特別計量器 規格・通信 取引に使える計量の特例に対応した計量器。kWh従量課金の前提となる。
な行
ナラティブ管理 政策 住民の不安(高い・危険・冬は使えない等)に、データと使い分けの説明で先回りして応える広報の考え方。
は行
ピークシフト/ピークカット 電力・系統 需要の山を時間的にずらす(シフト)/山自体を抑える(カット)こと。蓄電池やスケジューリングで実現。
プレコンディショニング 機器 充電前にバッテリーを適温に整える機能。寒冷地での充電速度低下を抑える。
ま行
目的地充電 機器 商業施設・観光地・道の駅など滞在先での充電(6〜50kW、30分〜数時間)。公有地設置と民間誘導が役割。
ら行
ローミング 規格・通信 事業者をまたいで1枚のカード・アプリで充電器を相互利用できる仕組み。OCPIが標準。
用語 カテゴリー 意味
A-Z
AFIR 政策 EUの代替燃料インフラ規則。高速60km毎の高出力充電やBEV1台あたり1.3kWの容量確保を義務化。
BEV 機器 電気自動車(BEV)
CCS2 規格・通信 欧州・豪州標準の急速充電コネクター規格(最大350kW)。ISO 15118のPlug&Chargeにも対応。
CHAdeMO 規格・通信 日本発の急速充電コネクター規格。日本で現在も主流。V2X機能を商業ベースで唯一実装。後継がチャオジ3.0。
GB/T 規格・通信 中国の充電コネクター規格(最大250kW)。将来はチャオジ3.0への移行が予定される。
ISO 15118 規格・通信 車両と充電器の通信規格。Plug&Charge(差すだけで認証・課金)を実現する基盤。
MTTR(平均復旧時間) 事業・契約 故障から復旧までの平均時間。本書のKPIでは24時間以内を目標値とする。
NACS(SAE J3400) 規格・通信 テスラ起源の北米コネクター規格。2024年にSAE J3400として標準化され主要メーカーが採用開始。
NEVI 政策 米国の連邦充電インフラ補助プログラム。連邦・州・地方の資金フローのモデル。執行遅延の教訓も。
OCPP 規格・通信 充電器と管理システム間の標準通信プロトコル。1.6J以降が補助金要件。2.0.1はスマート充電に対応。
OCPI 規格・通信 事業者間ローミングのための通信規格。1枚のカードでの相互利用を可能にする。
OTA更新 規格・通信 充電器のソフトウェアを遠隔更新する仕組み。OCPP 2.0.1が前提。
PHEV 機器 プラグインハイブリッド車
Plug&Charge 規格・通信 ケーブルを差し込むだけで認証・課金が完了する仕組み。アプリ・カードが不要になり利便性が向上。
PPP/PFI 事業・契約 官民連携・民間資金活用による事業方式。民間ノウハウとリスク分散の利点。大規模拠点に向く。
RFI / RFP 事業・契約 情報提供依頼(RFI)と提案依頼書(RFP)。事業者対話・調達の文書。
SA/PA 機器 高速道路のサービスエリア・パーキングエリア。経路充電(急速)の重要な設置拠点。
SDV 機器 Software Defined Vehicle。ソフトで機能が定義される車両。充電器側にも将来要件への備えが要る。
SLA 事業・契約 サービス品質保証。復旧24時間以内・稼働率95%以上などを契約条項に明記し、達反時のペナルティも定める。
TCO 政策 総保有コスト。車両価格に燃料費・メンテ費を含めた実質コスト。「EVは高い」への説明に用いる。
V2H / V2L 政策 EVから住宅(V2H)・機器(V2L)へ給電すること。停電時の非常用電源、電気代のピークシフトに活用。
V2G / VGI 電力・系統 EVを系統の調整力として活用(V2G)し、系統と統合する考え方(VGI)。需給調整市場参加で収益源にも。
V2X 電力・系統 Vehicle to Everything。EVから住宅・機器・系統への双方向給給電の総称。V2H/V2L/V2Gを含む。
VPP(仮想発電所) 電力・系統 分散する蓄電池・EV・充電器を束ね一つの発電所のように制御する仕組み。地域の再エネ需給最適化に活用。
国際比較