Q. EVの蓄電池にはリチウムやコバルト等の希少金属が使われているので、今後それらが不足するのではないですか?

A. 短期的に供給が不足することは考えられますが、代替技術の普及やリサイクルの推進により、長期的には埋蔵量は足りるだろうとみられています。

最終更新:2025年3月11日

蓄電池の需要は、電気自動車(EV)だけでなく、再生可能エネルギーの導入拡大にともなう定置型蓄電設備においても急激に伸びています。そのため、希少金属の供給不足が短期的には発生する可能性があります。しかし、長期的にはリサイクルの推進や技術革新の進展により、この問題を緩和することが可能と考えられています。

資源需要の見通し

EVの駆動用バッテリーの大半は「リチウムイオン電池」が使用されています。この電池には、リチウムコバルトニッケルグラファイトなど、複数の希少金属が含まれています。

国際エネルギー機関(IEA)が発表した「世界重要鉱物見通し 2024」では、EVに使用されるこれらの希少金属の需要見通しが示されています。特に、リチウムは今後もっとも急速に需要が増加すると予測されています。

部門別およびシナリオ別の世界のリチウム需要予測

IEAシナリオについて

STEPS(Stated Policies Scenario)

現在の政策と既存の計画を反映したシナリオ。各国の政策が確実に実施される前提で、エネルギー需要や排出量の推移を予測する。

APS(Announced Pledges Scenario)

各国の政府が発表した気候目標や誓約(NDCなど)を達成すると仮定したシナリオ。脱炭素化の進展はSTEPSより速いが、実施の不確実性も含む。

NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)

2050年までに世界全体でネットゼロ排出を達成するシナリオ。再生可能エネルギーの急拡大、化石燃料の急減、エネルギー効率の大幅向上などが必要になる。

2050年には、STEPSシナリオ1,200ktAPSシナリオ1,600ktNZEシナリオでは 1,700kt に達し、2023年の水準から10の需要に成長することが予測されています。

このうち、90%がEV産業による需要とされ、リチウムはEVにとって不可欠な鉱物です。また、NZEシナリオにおいてナトリウムイオン電池がEV市場でより広く普及した場合、2030年のリチウム総需要は10%減少する可能性がありますが、リチウムの全体的な需要増加の傾向に大きな影響を与えることはないとされています。

その他の希少金属についても、需要の増加が顕著です。2050年のNZEシナリオにおいて、EV産業が占めるニッケルの需要は現在の約9倍コバルトの需要は約4倍に達すると見込まれています。

このような需要の増加に対応するため、資源の探鉱が進められ、既存の埋蔵量の推定値も増加しています。

また、リサイクル技術の進展により、使用済みバッテリーからの金属回収が効率化されることで、一次資源への依存度が低下し、供給リスクの軽減が期待されます。

車両での役目が終わったEVバッテリーは、他のEVでの再利用、EV以外への再利用(セカンドライフ)、原料の回収(リサイクル)、廃棄に分かれます。

リサイクル制度

EVバッテリーのリサイクル技術は急速に進化していますが、技術を社会に浸透させていく上では、制度を整えていく必要があります。

各国ではバッテリーリサイクルの制度が強化されています。

EU「バッテリー規則(Battery Regulation)」

EUは、2022年にバッテリーのリサイクル規則を改訂し、新たなリサイクル率目標を設定した。特にリチウムイオンバッテリーのリサイクル率を2025年には 65%、2030年には 70% に引き上げることを目指している。また、バッテリーのライフサイクル全体を通じたサステナビリティを高めるため、バッテリーの設計段階からリサイクルしやすさを考慮することが求められている。

米国「バッテリーリサイクル助成金プログラム(Advanced Battery Recycling Initiative)」

エネルギー省(DOE)が、EVバッテリーやその他の先進的なバッテリー技術のリサイクルを支援する助成金プログラムを推進している。バッテリーのリサイクル技術の研究開発を助成することで、リサイクル効率の向上やコスト削減を目指している。

中国「バッテリーリサイクル政策」

中国では、2021年に「新エネルギー車のバッテリーリサイクル管理規則」を導入し、EVバッテリーのリサイクルを推進している。この規則により、EVバッテリーをリサイクルするためのインフラを整備し、バッテリーのリサイクル業者に対して認可制度を設けている。

また、EVバッテリーの技術革新も進んでおり、希少金属を使用しない新型電池が開発されています。現在、LFP(リン酸鉄リチウム)電池の採用が増加しており、これによりコバルトやニッケルの使用を削減できます。さらに、リチウムを使わないナトリウムイオン電池の実用化も進められており、これらの技術が普及すれば希少金属の需要削減を期待することができます。

今後、EV市場の拡大にともない、希少金属の需要は増加し続けると考えられますが、リサイクルの強化や代替技術の発展によって、資源の持続可能な利用が可能になると見られています。