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ベトナムの電気自動車(EV)市場は、持続可能な輸送手段への移行にともなって成長しています。このレポートでは、ベトナムのEVセクターの市場動向、政府の取り組み、主要なプレイヤー、主要レポートなどを概観します。

Research and Text: Phuong Linh Nguyen / Translation and Editing: Shota Furuya

1. 市場の概要

ベトナムでは、環境意識の高まりと政府の支援により、EVの需要が増加しています。従来の内燃機関(ICE)自動車の代替としてEVを検討する消費者が増えており、市場は力強い成長が見込まれています。

EV年間新規登録台数

2021年は、ベトナムのEV普及における重要なマイルストーンとなりました。VinFast社は12月に初のEVモデルである VF e34 e-car で市場に参入し、これが現地でのEV製造の幕開けとなり、将来の成長への布石を打つこととなりました。この流れは、2021年の167台という控えめな乗用車EV新規登録台数からはじまりました。

2022年には、より多くのモデルが利用可能になり、消費者の意識が高まるにつれて、ベトナムでのEVの普及が進みはじめました。VinFastは製品ラインナップを拡充し、VF e35とVF e36を発売し、需要の増加に対応するために生産能力を増強しました。VinFastはベトナムの乗用車EVセグメントを席巻し、2022年には50%を超える市場シェアを獲得しました。

さらに、テスラやBYDのような国際企業がベトナム市場への参入に真剣な関心を示し、提携や市場参入戦略を模索し、この分野の成長と競争をさらに刺激しました。2022年の乗用車EVの新規登録台数は、2021年比で275%増8,364台となりました。

2023年までに、EVはベトナムの主流となり、市場シェアは顕著に増加し、走行中のバッテリー電気自動車(BEV)の台数は10,000台を超えると推定されています。こうした力強い成長は、VinFastが中国本土やASEAN地域に手頃な価格のEVを輸出するようになり、グローバルプレーヤーとしての地位を確立した結果だと考えられます。

充電設備

ベトナムのEV充電インフラは、近年目覚ましい発展を遂げています。ベトナム電力グループ(EVN)によると、現在、充電ポイントは全国に約15万件が設置されています。この広範なネットワークは、電動モビリティを推進し、化石燃料への依存を減らすという国のコミットメントを反映しています。充電ステーションの普及は、EV所有者の航続距離に対する不安を軽減するだけでなく、より多くの人々がEVへの乗り換えを検討するきっかけにもなっています。

2. 政府による政策の要点

EVの普及は有望であるにもかかわらず、ベトナムには明確な法的枠組みがなく、EV産業に対するインセンティブも限定的です。

目標値

ベトナムはEV市場に野心的な目標を設定しています。2022年7月22日に決定した876/QĐ-TTgにおいて承認されたグリーンエネルギー移行プログラムは、全国的な充電インフラの整備とともに、2050年までにすべての道路交通車両を電気またはその他のグリーンエネルギー源で走行させることを目標としています。

具体的には、2040年までに350万台のEVが導入されることを目指します。さらに、2030年までに国内で販売される新車の10%をEVにすることを目標としています。ハノイのグリーン成長戦略では、2030年までに二輪車全体の5%を電動モーターサイクルにすることを目標としており、ニャチャンのグリーン成長戦略では、2025年までに200台の電動バスを流通させることを目標としています。

インセンティブ

これらの目標に向けた取り組みを支援するため、いくつかのインセンティブが導入されています。2022年3月1日から施行されている政令10/2022は、BEVの登録料を最初の3年間免除し、次の2年間は50%減免するものです。同じく2022年3月1日から施行されている法律03/2022/QH15号は、2022年3月1日から5年間、BEVの物品税率を1〜3%に引き下げものです。これらの優遇措置は、全国的なEVの普及を促進するためのものです。

3. 主要な機関・団体とレポート

🏢 機関・団体

ベトナム電気自動車協会(EVAV)

ベトナムにおけるEV導入の促進と支援政策の提唱において重要な役割を果たしています。

Webサイト

ベトナム自動車製造業者協会(VAMA)

EV製造にかかわる自動車メーカーを含む、ベトナムの自動車製造業者の利益を代表しています。

Webサイト

VinES

バッテリーの開発と製造に注力し、ベトナムのEVエコシステムを支援しています。

Webサイト

📝 レポート

ベトナムのEV事情と市場: 徹底分析(2023年8月10日)

Vietnam’s EV Landscape & Market: An In-Depth Analysis (August 10, 2023)

概要:ベトナムはEV分野で急速に前進しており、2030年までに新車販売台数の10%を電気自動車が占めることを目指している。同国のEV市場は、当初は電動スクーターに焦点を当てていたが、電気自動車の製造に成功するまでに拡大し、ベトナムを東南アジアにおける重要な業界プレーヤーとして位置づけている。本レポートでは、ベトナムのEV産業における主要プレーヤー、EVの普及促進における政府と民間セクターの役割、さらなる成長のための課題と機会を探る。

Webサイト

ベトナムにおける電気自動車の開発促進(2022年12月)

Promoting the Development of Electric Vehicles in Vietnam (December 2022)

概要:ベトナムは、ASEAN域内のEV需要と生産、特に世界第2位の規模を誇る電動二輪車市場をリードする立場にある。政府の決定No.876/QĐ-TTgは、2050年までに運輸部門でネットゼロ排出を達成する戦略の概要を示しており、段階的にEVの利用促進、化石燃料車の生産終了、全国的な充電インフラの整備に重点を置いている。報告書は、EVの生産、サプライチェーン、需要、充電インフラの現状をレビューし、EV開発を強化し、気候変動目標と経済成長を支援するための提言を提示している。

Webサイト

ベトナムの電気自動車産業(2023〜2032年)

概要:このレポートはベトナムの電気自動車産業を分析し、主要な促進要因と機会、予測収益、主要企業の戦略に関する情報を掲載しています。

Webサイト

4. 参考文献

免責事項
  • EV市場スナップショットレポートの掲載内容は、最新の動向を踏まえ、随時変更することがあります。
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