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インドは、政府による強力な政策、焦点を絞ったインセンティブ設計、成長する市場に支えられ、主に二輪車と三輪車のEV普及で大きく前進しています。このレポートでは、EVを軸とするエコシステムへの移行を推進するインドの市場動向、主要なイニシアティブ、導入目標などを概観します。

Research and Text: Tabitha Sneha S / Translation, Data Visualization and Editing: Shota Furuya

1. 市場概要

EV年間新規販売台数

インドのEV市場は急成長しており、クリーンで持続可能な輸送手段への世界的シフトにおいて重要なプレーヤーとなりつつあります。この成長の原動力となっているのは、インセンティブやインフラ整備を通じた政府の強力な支援と、それに応答する消費者の関心の高まりです。

※ インドの「EV」は二輪車や三輪車が中心であり、これらが自動車全体に占める割合が圧倒的に高いため、他国と台数を比較する際に留意する必要があります。

インドのEV市場は過去10年間、緩やかながらも着実な成長を遂げてきました。2020年の販売台数は174,736台で、主に電動二輪車(E2W)が市場の約97%を占め、控えめなスタートとなりました。2021年まで、E2Wは依然としてEV販売台数の大半を占めていましたが、電動三輪車(E3W)の存在感が拡大し、電気自動車(E-Car)電動バス(E-Bus)の市場が立ち上がりつつあることから、EV分野の成長が期待されています。

その勢いは2022年に大きく加速し、EV販売台数は43万台を超え、市場拡大にとってきわめて重要な年となりました。E2Wが総販売台数の半分以上を占めてリードを維持する一方、E3WとE-Carが特に都市部と郊外でより大きなセグメントを開拓しはじめました。この成長は、FAME(後述)や州レベルの補助金といったインセンティブに後押しされたことに加え、EVが現実的な選択肢として広く受け入れられるようになったことを示しています。

2023年には、市場は120万台を販売するという素晴らしいマイルストーンを達成しました。EVの販売台数が急増し、消費者のEVに対する信頼が高まったことが示されるとともに、公共交通機関の電化に対する関心も高まり、E-Busへの転換も進みました。

2024年度のEV販売台数は170万台を超え、成長は継続しています。E2WとE3Wが市場の基盤を形成し、合計で販売台数の87%近くを占めています。E-Carでは、タタ・モーターズが圧倒的な市場シェアで牽引し、80%の伸びを記録しました。E-Busもまた、タタ・モーターズやJBMオートなどのリーダー企業の貢献により、著しい成長を記録しました。

インドのE-Carの成長は、バッテリー電気自動車(BEV)が中心であり、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の採用はごくわずかとなっています。補助金やインセンティブといった政府の政策はきわめて重要であるものの、充電インフラやサプライチェーンの現地化には課題が残っています。

この成長軌道を維持し、国が目指すEVの導入目標を実現するためには、政策支援やテクノロジーイノベーションなど、持続的に取り組むことが不可欠となります。

充電設備

インドでは、EVの需要拡大に対応するため、EV充電インフラを急速に拡大しています。2024年3月時点で、AC充電器とDC充電器の両方を含む公共のEV充電ステーションは16,347カ所あり、2020年の約1,600カ所から約10倍に増加しています。このうちAC充電器は11,384で、残りがDC充電器です。

稼働中のEV充電器の大半はプラグイン式の導電タイプで、バッテリー交換は特にE2WやE3Wで着実に普及しています。さらに、インドではEVの公共充電ネットワークが拡大しており、低速充電器と急速充電器の両方が導入されています。低速AC充電器は一般家庭や職場に設置され、急速充電器は公共ステーションに戦略的に設置されています。

2. 政府の政策

FAME(Faster Adoption and Manufacturing of Hybrid and Electric Vehicles)イニシアティブは、EVの普及を促進するためにインド政府が導入した主要な政策枠組みです。FAMEは3段階で実施されてきました。

  • FAME I(2015~2019年)は、EV製造の促進と支援エコシステムの構築に重点を置き、89億5000万インドルピー(1億700万米ドル)の予算で、27万8,000台の個人用EVと465台のEバスが導入されました。
  • FAME II(2019~2024年)は、補助金とインセンティブを通じてEVとハイブリッド車の導入を加速することを目的としており、予算は14億米ドルでした。このフェーズでは、さまざまなセグメントで最大70万台のEV購入を促進しました。

州レベルの政策

インドの各州政府は、さまざまな政策的支援を試み、EVの導入を積極的に推進しています。

  • カルナータカ州は、ハイブリッド車やEVに対して免税措置をとっており、30,000ドル以下のハイブリッド車については登録料の免除もおこなっています。
  • グジャラート州は、E2W、E3W、EVに多額の補助金を支給しています。また、250カ所の充電ステーションを設置し、2025年までに20万台のEV普及を目指す計画もあります。
  • タミル・ナードゥ州は、2025年までにEV部門に5万ルピーの投資を誘致し、15万人の雇用を創出しています。
  • マハラシュトラ州は、多額の補助金を支給することで、2025年までに1万台の電気バスを導入し、主要地域に1,500カ所の充電ステーションを設置しようとしています。

導入目標

インドは、2030年までに2億5,000万台の自動車のうち5000万台をEVにすることを目指しています。二輪車と三輪車のセグメントでは、80%以上のEV普及を目指しています。

PM E-DRIVEスキーム(後述)では、2030年までに14,000台のE-Busを目標としています。さらに、生産連動インセンティブ(PLI)スキームでは、国内のリチウムイオン電池生産に焦点を当て、年間50GWhの電池生産能力を目標としています。

EVの普及を支援するため、2025年までに高速道路沿いや大都市圏に1万カ所の急速充電ステーションを設置するなど、年間40万カ所の充電ステーションが計画されている。2027年までに、二輪車は25kmごと、四輪車は100kmごとに充電ステーションを設置する100%EV対応の高速道路網を構築し、2030年までにEV充電に75%の再生可能エネルギーを使用するという目標を掲げています。

インセンティブ

生産連動インセンティブ(PLI)スキーム:EVと部品の国内生産を促進するため、生産量と販売量に応じた財政的インセンティブを提供する。電池生産とEV製造のためのPLIスキームで1億8千万 インド・ルピー。

PM E-DRIVEスキーム(2024年):EVの普及を加速させるため、1億900万インドルピー(約13億ドル)が割り当てられています(2024年9月承認)。これにはE2W、E3W、E-救急車、E-トラックに対する補助金が含まれています。特に、E2Wに5,000ルピー、E3Wに5,000ルピー、E-トラックに5,000ルピーが割り当てられ、古いトラックのスクラップに対する補助金も追加されています。さらに、公共交通機関が14,000台以上のEバスを購入するために43億9100万ルピーが確保されています。政府は、販売台数の2%未満だったEVを2030年までに30%まで増やすことを目標としています。

税制上の優遇措置:EV購入のためのローン利息は、所得税法第80EEB条にもとづき、最高15万ルピーまで所得税控除の対象となります。

3. 主要な機関・団体とレポート

🏢 機関・団体

インド行政委員会

NITI Aayog

インド行政委員会は、インドの電動モビリティに関する政策や枠組みの策定において中心的な役割を果たしています。変革的モビリティと蓄電池に関する国家ミッションや、EVの普及に関する包括的な情報を提供するe-AMRITのようなプラットフォームなど、重要なイニシアティブを立ち上げています。

Webサイト

エネルギー効率局

Bureau of Energy Efficiency(BEE)

エネルギー効率局は、エネルギー効率化を促進し、全国のEV充電ステーションの開発を促進する役割を担っています。主要都市に公共充電ステーションを設置するための行動計画を作成し、インドのeモビリティ転換を加速させることを目指しています。

Webサイト

重工業省

重工業省は、FAMEスキームの実施を担当し、EVへの補助金提供や充電インフラの整備をおこなっています。

Webサイト

📝 レポート

インドEVダイジェスト2023

India EV Digest 2023

エネルギー効率局が2024年3月1日に発表した「インドEVダイジェスト2023」は、FAMEスキームや州の政策などの取り組みやEV販売の動向など、インドのEVの成長を紹介しています。同報告書では、2030年までにEVの販売台数は49%増加し、自動車販売台数の30%を占めると予測しています。また、EVアクセラレーターセルの設置、社会意識の向上、充電インフラに関するDISCOMとの調整など、積極的な対策を紹介しています。

Webサイト

ギア・シフト:進化するインドの電気自動車事情

Shifting Gears: The Evolving Electric Vehicle Landscape in India

2020年10月に発行されたKPMGのレポート「ギア・シフト:進化するインドの電気自動車事情」は、インドのEV市場を分析し、2030年までの普及をセグメント別に予測しています。同レポートでは、E2W(普及率25~35%)とE3W(同65~75%)の大幅な成長を予測する一方、四輪乗用車の普及率は低くなると予測しています(個人では10~15%、商用では20~30%)。

EVの普及を促進するためには、政策的な支援の枠組み、強固な充電インフラ、資金調達ソリューションが重要であることを強調しています。また、インドのEVセクターが持続的に成長するためには、生産の現地化と効果的なリサイクル戦略が必要であることも指摘しています。

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インドの道路交通セクターの転換

Transitioning India’s Road Transport Sector

IEAとインド行政委員会による報告書 「インドの道路交通セクターの転換」は、2070年までにネットゼロを達成するための戦略を概説しています。介入がなければ、道路交通のエネルギー需要とCO₂排出量は2050年までに倍増し、気候目標を阻害する可能性があります。

報告書は、2050年までにエネルギー需要を30%削減し、予測されるCO₂排出量の60%を削減する政策を提唱しています。提言には、エネルギー効率の改善、よりクリーンなエネルギー源への移行、大気汚染への対応などが含まれています。

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4. 参考文献

免責事項
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