スウェーデンの電気自動車(EV)市場は、効果的な税制インセンティブにより、急速に普及が加速しています。このレポートでは、スウェーデンにおけるEVの市場動向、政府の政策、主要機関・団体とレポートなどを概観します。
Research and Text: Vanessa Laza / Translation, Data Visualization and Editing: Shota Furuya
1. 市場概要
EV年間新規登録台数
スウェーデンのEV市場は、2020年から急速に成長しています。当初は PHEV がその原動力となっていましたが、2021年以降は BEV が普及の中心を占めています。
急速な普及がはじまる前年の2019年に、スウェーデンの年間の新規自動車登録台数に占めるEVの割合は10.9%(BEV 24,431台、PHEV 15,594台、合計 40,025台)でした。
2020年には、PHEVが65,831台と大幅に伸び、BEVの27,897台とあわせて、年間の新規自動車登録台数に占めるEVの割合は32.1%になりました。
2021年には、引き続きPHEVが伸びて77,842台、BEVは前年の2倍となる57,454台となり、年間の新規自動車登録台数に占めるEVの割合は45%になりました。
2022年には、はじめてPHEVが前年比で減少し66,485台となり、一方でBEVは前年比1.6倍の94,603台となり、BEVがPHEVを上回る結果となりました。そして、年間の新規自動車登録台数に占めるEVの割合は55.9%となり、はじめてEVがICEを上回りました。
2023年のEV年間新規登録台数は172,524台(BEV 111,338台、PHEV 61,186台)で、年間の新規自動車登録台数に占めるEVの割合は59.6%となり、スウェーデンのEVへの転換は確実なものとなっています。
また、2024年1月〜10月までのEV月間新規登録台数の推移は、以下のようになっており、BEVについては四半期の最終月(3月、6月、9月)に増加する傾向があります。
この2024年の月次データを乗用自動車全体の新規登録台数に占める割合で見た場合、BEV+PHEVの割合が毎月50%を上回っており、すでにスウェーデンではEVがICEを凌駕していることがわかります。
さらに、2024年1月〜10月のBEV販売の上位10車種を見ると、圧倒的に Tesla Model Y が市場を牽引していることがわかります。
充電設備
2020年、スウェーデンには累積で14,327件の充電ポイントが導入されていました(AC 12,961件、DC 1,366件)。2021年は前年比28%増の18,423件、2022年には同じく前年比32%増の24,357件と順調に増加しています。
2023年と2024年はいずれも約1万3,000件が追加設置されており、EVの普及と充電インフラの拡充が両輪で進んでいることがわかります。
2. 政府の政策
インセンティブ
スウェーデンでは、EVに対して年間道路税が 360SEK(31ユーロ)と低く設定されています。また、企業が所有するEVに関しては、税制優遇がおこなわれており、従業員の私的使用に対する課税が軽減され、従業員にとってEVのリース費用が従来の内燃機関車よりも低くなっています。2017年11月時点では、新規EV販売の約70%が法人車として登録されていました。
2022年11月8日以降、個人向けの「気候ボーナス(Klimatbonus)」と呼ばれる購入補助金制度は終了しました。しかし、2024年2月13日から、企業や自治体向けに軽商用EVに対する新しい補助金「気候プレミアム(Klimatpremie)」が導入されています。
2021年4月からは、EVに対する企業の課税制度が改正され、65万SEK(63,000ユーロ)以上の高級車に対する追加税が撤廃されました。また、同時期から二酸化炭素排出量にもとづく車両税の基準も改定され、90g/km以上の車両に対して追加税が課されるようになりました。
政府は2018年から現在まで、年間9,000万SEK(870万ユーロ)を拠出してEVインフラの拡充を支援しています。家庭用充電器を導入する際は、ハードウェアと設置費用の最大50%または1万SEK(960ユーロ)が支援されます。
3. 主要な機関・団体とレポート
🏢 機関・団体
スウェーデン電気自動車
Elbil Sverige
Elbil Sverigeは、1980年に設立された独立組織で、スウェーデンの電気自動車消費者団体です。EVに関する知識を共有し、消費者や企業に新技術を伝えることを目的としています。具体的には、自動車産業、充電・エネルギー企業、政治家、自治体と協力してセミナーを開催しています。
📝 レポート
消費者モニター 2023年 国別レポート スウェーデン
Consumer Monitor 2023: Country Report Sweden
概要:このレポートは、2023年のEAFOコンシューマーモニターの調査結果を報告しており、BEV利用者の行動や意識、課題などを分析しています。スウェーデンでは、BEVの購入価格が最大の障壁となっているものの、政府の支援策などを通じて、BEVの普及が進んでいる状況が示されています。
4. 参考文献
- European Union. (2024). Sweden. European Alternative Fuels Observatory.
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Virta Global. (2024, August 06). The Global Electric Vehicle Market In 2024. Retrieved November 27, 2024.
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GEVA. (n.d.). Swedish EV Association. Retrieved December 04, 2024.
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Regeringskansliet. (n.d.). Ministry of Climate and Enterprise. Retrieved December 04, 2024.
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