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タイの電気自動車(EV)市場は、同国がより持続可能な輸送ソリューションへとシフトするにつれて勢いを増しています。このレポートでは、タイにおけるEVの市場動向、政府の政策、主要機関・団体とレポートなどを概観します。

Research and Text: Phuong Linh Nguyen / Translation and Editing: Shota Furuya

1. 市場の概要

EV年間新規登録台数

タイの2020年の乗用車用EVの新規登録台数は10,806台で、同国におけるEV普及の初期段階を反映した控えめな数字でした。

2021年には、登録台数は12,841台に増加し、バッテリー電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)のバランスがとれていました。

2022年には、EV登録台数は32,148台と大幅に増加しました。この増加の大部分をBEVが占め、20,817台が登録されています。

2023年には、10万台以上のBEVを含む111,922台の乗用車用EVが新規登録され、市場は急劇に拡大しました。

このようにタイのEV市場はここ数年、大きな成長を遂げていますが、課題がないわけではありません。成長自体は心強いものである一方、特に充電インフラや現地生産能力といった潜在的なボトルネックも浮き彫りにしています。税制上の優遇措置や補助金を含む政府の政策は、このような拡大を後押ししてきました。しかし、タイがこの勢いを維持するためには、インフラと製造への継続的な投資が不可欠です。

充電設備

充電インフラも大幅に拡大しました。2021年、タイの充電ステーション数は693ヵ所でしが、2023年末には約2,656ヵ所にまで増加しました。しかし、このような進展にもかかわらず、特にインフラ整備が遅れている地方では、EV登録台数の増加に充電ネットワークが追いつかない可能性が懸念されています。

2. 政府の政策

目標値

タイ政府は、EVと関連インフラの導入と生産を促進するための明確な目標を設定しています。同国は、より広範な気候変動目標にそって、東南アジアにおける主要な自動車製造ハブとしての地位を確保するため、2030年までに自動車生産台数の30%をEVにすることを目指しています。さらに政府は、2025年までに走行車両の30%をゼロエミッション車(ZEV)とし、2030年までに50%まで増やすという野心的な運用目標を設定しています。

インセンティブ

タイのEVインセンティブ・プログラムは、EVの生産と普及の両方を推進する仕組みになっています。小売価格が200万〜700万バーツで、バッテリー容量が50kWh以上の乗用車EVに対して、政府は補助金を支給しています。2024年から2027年までは、50kWh以上のバッテリーに対して10万バーツから段階的に補助金が支給され、それ以降の年では補助金額が減額されます。10〜50kWhの小型EVバッテリーも補助金の対象となっており、2024年に5万バーツからはじまり、それ以降の年は減額されます。

また、政府は大幅な関税引き下げも導入しており、プログラムの最初の2年間(2024〜2025年)にはEVの輸入関税を最大40%引き下げます。さらに、EVの物品税は8%から2%に引き下げられ、消費者とメーカーにさらなる経済的インセンティブを提供しています。補助金と減税のこの二重のアプローチは、EVをより手頃な価格にすると同時に、現地の製造業を活性化させることを目的としています。

現地組立のBEVピックアップトラックとEモーターサイクルについては、補助金制度により重点が置かれています。小売価格が200万バーツ以下で、バッテリー容量が50kWh以上の現地組立BEVは、2024年から2027年まで、1台あたり10万バーツの補助金を受けることができます。これらの自動車に対する物品税は、2026年から2027年にかけては10%から2%に、2024年から2025年にかけては0%に引き下げられます。

小売価格が15万バーツ以下で、バッテリー容量が3 kWhの二輪車については、2024年から2027年にかけて1台あたり1万バーツの補助金が割り当てられ、同じ期間に物品税が5%から1%に引き下げられます。

3. 主要な機関・団体とレポート

🏢 機関・団体

タイ電気自動車協会(EVAT)

タイにおける電気自動車の普及とインフラ整備を推進する業界団体です。

Webサイト

タイ自動車研究所

イノベーションと持続可能性に焦点を当て、自動車産業の研究開発支援をおこなっています。

Webサイト

自動車技術局

自動車セクターの規制基準を監督し、安全および環境コンプライアンスを確保します。

Webサイト

📝 レポート

タイにおける電気自動車の開発と普及:EVの普及促進に向けて(2022年10月)

Electric Vehicle Development and Deployment in Thailand: Moving Towards an Acceleration of EV Adoption

概要:タイの電気自動車産業は急成長を遂げており、EVの販売台数は2020年の1,897台から2025年には12,500台に増加し、市場価値は約8億8,600万ドルに達すると予測されている。この成長を支えるため、タイ政府は税制優遇措置を導入し、電気自動車充電インフラの拡充を進めている。本書では、EVインフラ産業における市場機会を取り上げ、パートナーシップに焦点を当て、2021年9月現在、主要都市を中心に693カ所の充電ステーションがあることを紹介している。

Webサイト

タイ、補助金制度を縮小し現地生産EVへの支援を継続(2023年11月)

Thailand Scaled-Down Subsidy Program Continues Backing for Locally Produced EVs

概要:タイは2023年11月1日に「EV3.5」補助金制度を承認し、2024年から2027年まで1台あたり最大10万バーツ(2,760米ドル)を提供し、国内のEV生産を後押しする。この制度は外資を誘致し、東南アジアのEV製造部門におけるタイの役割を強化することを目的としており、すでに中国ブランドが台頭し、欧州メーカーも関心を示している。本稿では、補助金の詳細と、この地域のEV産業におけるタイの野心について考察する。

Webサイト

東南アジアのEV革命をリードする:タイEV市場徹底解説(2024年8月)

Dominating SEA’s EV Revolution: The Ultimate Guide to the EV Market in Thailand

概要:ASEAN最大の自動車生産国であるタイは、政府とトヨタや日産といった大手自動車メーカーの双方から多額の投資を受け、自国を地域のEV成長のハブとして位置づけている。OEMが設備をEV生産に移行する中、タイは東南アジアにおける電動モビリティの推進において重要な役割を果たすことになる。本稿では、業界の概要を紹介し、さらなる発展の機会を明らかにする。

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4. 参考文献

免責事項
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